はりは、金と咸
「はり治療」の「はり」は「鍼」という漢字を使います。「針」のほうは裁縫に使われる「はり」となります。 先日、ある患者さんが、 「「鍼」という漢字は、「かねへん」に「咸」と書きますが、「咸」って感じるの「感」の上の部分ですよね!」 「鍼治療って、金属である鍼を感じるってことなんですかね!」 と、仰っていました。 私はこの患者さんは鋭い感性の持ち主だと思うばかりでなく、患者さんから気づかされることが多いとつくづく思うのです。 この患者さんは、毎回の治療の際に鍼を受ける感覚が、体の状態が悪かった治療を始めた頃は「響き」(響きについてはこちら)が強烈に感じていたのが、治療が進み体が変化し、体の中の滞りが解消され循環が良くなるにつれて、鍼の響きの強烈さが薄れ、よりマイルドで心地良いものに変化してきたと仰います。 響きが心地良いものに感じられるようになるにつれ、抱えていた症状が改善・解消され、体全体の体調が良くなることがよくあります。これは多くの患者さんに起きていることであり、私自身も私の師匠の鍼を受けてきて、全く同感できます。 また、患者さんが感じる変化だけではなく、鍼師が鍼を介して、また手から伝わってくる感覚というものがあり、それも治療を進めていくにしたがって、常に変化します。 「咸」という漢字を調べると、 「咸は感ずることである。感情が心の中に動くこと。自分の心がけが正しく、それが相手に伝わり、喜んでこれに応じるときはその人と親しく交われる。」 とあります。 金属である鍼を通して、鍼師と患者さんの間で、相互に様々な変化を感じながら、患者さんの本来持つ治癒力を引き出すことが鍼治療の特徴であると思います。